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2016年8月20日 (土)

不愉快なNHKのドラマ『とと姉ちゃん』(西田征史脚本)

一 NHK落合将プロデューサーのでたらめな話
 2016年度前期のNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』は、ユニークな雑誌として現在も健在である『暮らしの手帖』とそれに関わる人物(大橋鎭子・花森安治など)をモデルにしたものであることは、NHKが今度のドラマは『暮らしの手帖』と花森安治・大橋鎭子の話ですよと宣伝に努めていることからも明らかである。『暮らしの手帖』がモデルと宣伝した上、登場人物名を大橋鎭子の三姉妹を小橋常子の三姉妹、花森安治を花山伊佐次ともじっている。なのにモチーフだけをもらった創作だとしている。花山や大橋をモデルをしたドラマではないとする(落合将)。尤も、落合はモチーフもモデルもそう違わないと言っている。しかし、「資料提供 花森安治・大橋鎭子」とタイトルバックで明記し、創作の作品だと何故言うのか。
 宣伝のために『暮らしの手帖』や花森安治や大橋鎭子の知名度を利用し、つまらない話でドラマを作るので、実話に規制されたくないと言わんばかりである。要するに勝手なのである。
 『とと姉ちゃん』は西田征史が作った話だとしている。確かにモデルでもモチーフでも構わない、というより簡単に分けられるものでもない。話をつくるための勝手な出来のよくない西田が作った張りぼては、白けるのである。西田はギャグ作家として年期が入っているらしいが、話の端々に訳の分からんことがありすぎである。落合将は肯定的なようだが、確かなモデルとのギャップを感じないことも無いだろう。本当に感じないのなら、そのような無能・無感覚な人物は人々にとって有害なだけである。現存した人物とのギャップについては、後で言うとして、まずドラマに出てくる異様というか耳ざわりな言葉である。「とと姉ちゃん」?大橋鎭子さんが、子供のときに父親の葬儀に際して喪主を勤めたというエピソードが元になっているようである。「とと・かか」とはどこの言葉なのか。ドラマの小橋家は高学歴のいわば資産家系で、家庭でも、ちょっと庶民的とは思えない丁寧な言葉遣いである。「とと・かか」など、どこのギャグにも使えそうもない。「あまちゃん」の亜流か?
 「どうしたもんじゃろうのおー」も意味不明の白け台詞である。さすがに、作者自身、白けると思ったのだろう。使用頻度は激減している。
 落合は西田が有能で面白いドラマを作るというが、正直白けるばかりである。一貫したモチーフも見当たらない。それは西田がギャグ作家の由縁なのか。モデルにこだわらずにすることでモチーフを出したというが、モデルになる人々の現実をゆがめてしまってどんなモチーフが出てくるのか、落合将はNHKのプロデューサーだろう。判らない筈は無いと思うのだが。
 西田も落合もモデルの姿をゆがめる方がドラマになると思っているようでは最悪である。視聴率が20%を連続して越えているそうであるが、西田とか落合の制作者としての資質・姿勢・教養は底が見えたと言っても過言ではない。
 あざとい演出など論外である。人物のモデルの大橋鎭子さんは、女学校卒業後勧業銀行の調査部に勤務する。ドラマの小橋常子は卒後、タイピストになる。なぜタイピストなのか、しかも、「邦文タイプ」であるが「和文タイプ」と言い通している。ワープロが登場するまで、みんな使っていたものである。それにドラマでの常子のタイピングの場面ではおどろくほど拙い。これでは到底仕事にならない。そうであるのに、クビになりかけたとき、「私は家族をやしなわなければならないのです」と泣いて懇願している。家族を養うほどの技術とはとても言えないのである。会社の男社会とか女性の職場事情とかいろいろ話題にするのだが、いずれも一々挙げる気もしないほど拙い。クビになりかけたきっかけが女性二人で出かけたビア・ホールでの騒動である。戦時中のことである。確か常子が同僚の女性から相談したいことあると出かけたようだったが、西田とか落合とか、時代や社会をどう考えているのか、全く理解に苦しむ。
 西田も落合も、実はNHKの制作部全体が、時代とか社会についての感覚も認識も全く無いと思わざるを得ない。モチーフ以前の問題である。
 
二 木俣冬氏のチェック
 
 西田の同業者らしい木俣冬氏のチェックの入ったサイトの文をたまたま見たことがある。一方的にぼろくそに言うのは避けている。やはり同業者のいたわりなのか。暫く続いていたことがあるのが「黒とと・白とと」という評価表だった。これは拙いなと思われるところを「黒とと」、なかなか良いと思われるところを「白とと」と論評していた。見たのは、戦時中の話のところである。ドラマに当時の話にしては変なことが多くて、正直、ドラマを征史ではなく正視できなかった。木俣氏も厳しくチェックし難くて、「黒・白」一覧にして論評したものだろう。
 「黒とと」とされたところは、ちょっとありえないなあ、というところのものである。だいたい、人々の生活の歴史がモチーフのドラマである。1回はわずか15分のドラマである。「ちょっとそれはおかしいのじゃないか」というとこが1つでもあれば、喜劇でもコミックでもそれは失敗なのである。ところが、「黒とと・白とと」一覧は最近見かけないが、「黒とと」が半分ほど並んでいたときがあったように記憶する。これは、ドラマとしては明らかにどうしようもない「落第」ということである。
 同業者をけなすようなことはしたくないのかも知れないが、同情的な表現は、自分に対する甘さと思わないといけない。過剰なケチ付けをする必要はないが、名前のもじり方からからして大橋鎭子さんや谷森安治氏をモデルとしていることは否定できないだろう。
 ドラマの宣伝もそうであり、企画の段階から、『暮らしの手帖』の話題を念頭にしているものである。「ドラマ」にしており、しかも名前も捩っているのだから、実話とは別の物語としてもよいのだろうが、話題だけ依存して、モデルに対するオマージュが全く欠損してしまっていないかと思うのである。というより、モデルを全く理解していないのである。理解できていないのである。歴史や社会についての関心も無いことは、戦時中の家の姿をみてもわかる、住居がとても奇麗で時代や状況を全く感じさせない。衣服にしてもそうである。これが『暮らしの手帖』を刊行することになる人のドラマなのである。
 木俣冬氏も本当は気になったのでは無いのか。
 
三 「大橋鎭子」のことではない、という言い訳の問題
 「大橋鎭子」さんのことではない、として「小橋常子」とし、静岡の女学校から東京府立高等女学校へ編入する。ところが、この女学校の程度がよろしくない。
 正直、これは西田という脚本家の資質の無さに起因することである。府立高女というだけで、そこに通学する女性のプライドと資産が判らないといけない。だから弁当屋の娘の制服に対する憧れも成り立つのである。このエピソードとつまらない苛めとは全く不整合じゃないか。
 美子の学校へ常子がのりこんで失敗するエピソードも、これまた西田のつまらないギャグ台本を想起するだけである。こういうつまらないギャグ台本を落合はじめNHK制作部は歓んで歓迎して国民に垂れ流しているのなら、NHKの受信料契約を是非考え直さないといけない。
 大橋鎭子さんが、女学校を卒業後、勧業銀行調査部に勤務し、日本女子大に入学し、病気で止めて、読書新聞に勤務していたという経歴は、後に『暮らしの手帖』を編集出版することで外せない経歴である。
 常子の台詞で、耳障りなものが度々ある。「儲けないといけません」。一女性起業家の話がモチーフなのか。広告を「入れる入れない」が大騒ぎで、花森がモデルの花山が会社を辞めるというエピソードがある。常子に会社を存続させるために「社長としての私が決断しました」とか言わせている。そもそも、会社のために仕事をしているわけでも、儲けるために始めたことでも無い筈である。
 そもそも西山にはモチーフなど無いのだろう。読書新聞をしていて、戦後の生活のなかで、みんなが欲しがっていた情報を提示できた喜びが判らないといけない。
 ドラマなのに、戦後の社会の姿・風俗の画面が全くなっていない。
 落合は仕事をちゃんとしろよ。戦後、戦地から帰って間もない人が、糊が効いてアイロンが当たったワイシャツにネクタイで登場するのにはかなわんよ。そんなので、『暮らしの手帖』の編集発行をしていた人たちの話がモチーフになると思うか。
 モチーフの話で、平塚雷鳥が唐突に出てくる。これは真野響子を出演させたかったからか?鞠子がフェミニストらしい文を期待したら、「胡麻汁粉」の話になったので、面食らっていると、「変わるものよ」とかいわれ、衝撃をうけたような場面がある。これも変である。というのは、1946年に戦後第1回の総選挙が行われ一挙に39名の女性代議士が出現しているのである。今もこの記録は破られていない。『青踏』が公刊された時代とは違っているのである。『暮らしの手帖』もそういう具体的な生活の充実に目を向けた雑誌であった筈である。
 西田も落合も『暮らしの手帖』と「花森安治・大橋鎭子」を全く理解していないのである。

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